「意識で考える」ことは脳内に新たな経路を発生させる活動


アイ・ボディ―脳と体にはたらく目の使い方


脳とはすべての動きの発生装置です。考えもまた動きの一つです。考えはMRI(核磁気共鳴画像法)によるスキャン画像によって、実際に体を動かしている時と同じような電気化学的処理が脳で行われていることが見えています。実際に体を動かす時と、ただ単に頭で考えるだけのときでも、脳内では同じような働きが発生しているという研究結果が出されています。呼吸や消化、循環などのレベルの活動は自律神経組織によってつかさどられており不随意的であると考えられています。私たちはこれらの機能をはたらかそうと意識しなくても、勝手に動いてくれているのです。


 私たちの動作の多くは、動作することを特に考えなくても起こせるものです。たとえば、歩くときに私は〈ひざを曲げて、伸ばす〉といったことを考えはしません。これは、私の脳が習慣として歩くということについて学習済みだからなのです。私の脳が私の歩きを調整してくれているので、私自身は自分で歩くことについて考えているといった事に気づくこともないのです。これは、車のラジオのチャンネルをプリセットしておくのと同じようなことなのです。プリセットされていれば、ラジオ局の周波数を覚えておく必要もありませんし、周波数を合わせるためにダイヤルを左右にまわあすといったことも必要ではなく、ただボタンを押しさえすれば聞きたい局にいくことができます。脳の中はこのような歩き慣れた小道(経路)が四達八達しており、そのおかげで私たちは、日常での活動のほとんどについて意識的に考えることもなく過ごせるのです。


 意識的に考えるということは、脳内に新たな経路を発達させる活動です。知的活動として、私たちには意識的に選択して決定を下し、行動を決定づけるだけではなく、意思や考えをも方向づける能力がありますが、この能力が根底にあるからこそアイボディのワークが可能になったのです。