米研究者が論文発表を行った「光学迷彩」技術とは?

光学迷彩」が実現しそうな見込みがあるようだ。


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一応、アーカイブの意義も込めて、全文転載。

日本の人気アニメ「攻殻機動隊」で登場する物体を透明化する「光学迷彩」技術の開発に米カリフォルニア大学バークレー校の研究グループが成功していたことが11日、明らかとなった。

 

この研究発表を行ったのは同大学のXiang Zhang教授(Chancellor's Professor)を中心とする研究グループ。

 
研究グループはメタマテリアルと呼ばれる10マイクロメートル大の極小サイズの素材を使い、光の光波を自然ではあり得ない方向に曲げることに成功し、そのメタマテリアルを視覚的に見えなくすることに成功したという。

 

これはいったいどういうことなのだろうか?

 

画像上はこのメタマテリアルによる光の屈折を示した図解となる。光波はこの素材に近づくとあたかも水の流れの途中にある岩のようにこの素材を避け、そのまま反対側に流れていく(研究グループはこの現象を「ネガティブ・リフレクティング(negative refracting)」と呼んでいる)。つまり、この物体の後ろ側にある映像は、この素材に遮られることなく前方に投射されることとなるため、前から見ている人にとってはこの素材はまったくの透明に見えることとなる。

 

Zhang教授は米軍の財政援助の元で長年、この「光学迷彩」技術の研究開発に従事。従来型の技術ではこの「ネガティブ・リフレクティング」はマイクロ波の領域でしか実現することができなかったが、今回、終に一般的な視覚可能な可視スペクトル全域で「ネガティブ・リフレクティング」を実現させることに成功。学術専門誌(「ネイチャー」と「サイエンス」の両方同時掲載)に論文発表を行った。

 

Zhang教授の研究は米軍が財政援助を行っていることからも判る通り、スポンサーの方はこの技術の軍事転用を期待していることが判る。米軍では具体的には戦車などを視覚的に見えなくすることができないか、期待をかけているようだ。

 

見えない戦車が登場するかどうかは別にして、今のところ、この「光学迷彩」技術はまだまだ、論文発表段階であることが判る。

 

例えば、このメタマテリアルを格子状に張り巡らせて繊維化して「光学迷彩」を作ることができたとしても、この原理の場合だと透明になってしまうのはその「光学迷彩」そのものとなってしまい「光学迷彩」を着ている人物を見えなくすることはできないからだ。

 

光学迷彩」を着ている人物を見えなくするためには相互に並んだメタマテリアル間で光の屈折を制御する必要があり、それにはまだまだ解決しなければならない問題が累積していそうだ。

 

ただし、Zhang教授の「ネガティブ・リフレクティング」は光の屈折を制御することによって物体を見えなくすることができるという非常に画期的な研究であることには間違いなく、今後の研究次第では近い将来には実用的な「光学迷彩」が登場する日もそう遠い未来のことではなさそうだ。

 

問題は、実用化された時、それを何に使うかである。