第四のパラドクス

第四のパラドクスは、多少分かりにくいせいもあって、4つの中でもっとも論じられることが少ない。だが、私の見るところでは、これは第三のパラドクスと対になっているのである。




駅Aを列車Bが通過する状況を考えよう。列車Bは駅Aの左側からやってくる。いま、時間・空間に最小単位があると仮定する。そして、駅も列車も空間の最小単位から見てその2単位分の長さを持つとする。


          ■■ 駅A
  列車B →□□ 
            □□← 列車C



          ■■
    列車B →□□    
          □□← 列車C

また、列車が空間の一単位分を移動する時間が、時間の最小単位に等しいとする。そうすると、駅は2単位分の長さを持つわけだから、列車が駅に入り始めて駅と重なるまでに、2単位時間かかることになる。さて、ここまでがウォーミングアップで、ここからが本番である。


 

 図のように駅Aの右側からも列車Cがやってきたとする。列車Cは列車Bと同じ速さである。BとCは同時に、かたや左側から、かたや右側から、駅Aに入り始める。駅の真ん中でBとCは出会い、そして同時に駅Aと重なる。BとCが出会ってからそれらが駅と重なるまでの時間は1単位時間であり、その間にBもCもそれぞれ駅の長さの1単位分を移動する。ところが、その間、列車Bは列車Cの空間2単位分を通過しているのである。ということは、列車Bが、すれ違う列車Cの空間1単位分通過する時間はその半分、すなわち1/2単位時間でなければならない。



ちょっとややこしかっただろうか。まぁ、簡単に言ってしまえば、静止した駅を通過するときはちゃんと単位時間あたり単位長さを移動していた列車が、同じ速さの列車とすれ違うときには、すれ違う速さは倍になるので、単位時間を半分に分割しないといけなくなる。つまり、「なんだ、最小単位なんかないじゃないか」というわけである。




第三のパラドックスと第四のパラドクスは組になってディレンマ(どっちを選んでもうまくいかない選択肢)を形成している。第三のパラドクスに従えば、時間も空間も点時間・点空間から構成されていているのではないかと言いたくなる。しかし、第四のパラドクスに従えば、そのように考えるとそれはそれで不合理なことになる。さて、どうすればいいのだろう。


つづく。。。