観察眼を鍛える
シャーロック・ホームズばりの、観察眼を鍛える方法がある。それは人々の記憶戦略、または意思決定戦略に注目する方法だ。
1、相手役に何らかの指示を出す。たとえば、電話番号やある個人に関する情報を記憶してもらうとよいだろう。
2、そのあと、その人が情報を記憶する際にどんな行動上のミクロ的手がかりを見せるかに注目する。
姿勢について
- 相手は姿勢を変えたかどうか?
- 相手は背筋を伸ばして座っているか、後ろにもたれているか、前かがみになっているか?
体感覚優位の人の場合、指示を出されると体を様々な方向に向け、両手で「私はあなたの話を聞いています」というようなジェスチャーをするものである。
言葉について
- 相手は「ふーん……」などのような言葉を無意識に漏らしていないか
- 何かを喋りたそうに口を動かしていないか
言語感覚優位の人の場合、出された指示や情報を何度か繰り返す傾向がある。
目、視線の動きについて
これは特に注意を払うべきポイント。次のポイントに注目してみてほしい。
- 何かを考えたり思い出しているとき、相手の視線はどの方向をみているか
もし相手が右上を見つめていた場合、あなたの指示に関する視覚地図を構築している証拠である。また相手が顔に触りながら視線を伏せて左側を見た場合、あなたの指示を内面で言語化しているか反復しているかのどちらかであろう
言語パターンについて
- 記憶すべき情報について話したり、その情報を確認したりする場合、相手はどんな種類の言語パターンを用いるか?
- 相手はあなたに情報を繰り返すように頼むか、それともその情報を紙に書き留めようとするか、あるいは「その情報に関する本や地図を見せてほしい」と頼むか?
このエクササイズに関するアドバイス
あなたもこの訓練を通じて相手の「心に入り込み、本当にその思いと通じ合っていたような証拠を見せる」ことが可能である。たとえば、あなたから指示を受けた後、相手が次のような反応を見せたら、こんな風に声をかけることができる。
- 相手が宙を見上げて何か思いあぐねている様子の場合――「あなたが思っているとおり、今の私の説明は難しかったですね」
- 相手が左右に落ち着きなく視線を動かしていた場合――「もう一度、今の説明をゆっくりと繰り返しましょうか?」
- 相手が右下を向き、眉をひそめていた場合――「もし今の説明が早すぎたのなら、もう一度段階的に説明しましょうか?」
実際、この種のNLPテクニックは、真の難題や困難を抱えている人(たとえば学習上の問題を持つ子供たちなど)を支える教師や心理学者たちの大きな力となっている。
たとえば、「英単語のつづりを間違えない人」を観察すれば、彼らが単語のスペルを思い出しているときに必ずと言っていいほど左上(視覚的記憶)を見つめていることがわかる。一方「つづりを間違えてしまう人」は、文字をつづろうとするときにほとんど左上を見ようとはせず、単語のイメージをなかなか形成できずにいるものであるそうだ。
このような観察とコーチングを活用すれば、子供たちの適切な認知戦略を伸ばすことができる。その行動面での手がかりを見逃さないように留意すれば、彼らの基礎学力に劇的な改善をもたらすことができる。