催眠の天才にして20世紀最大の臨床家ミルトン・エリクソン。『ミルトン・エリクソン その生涯と治療技法 / ジェフリー・ザイグ』

ミルトン・エリクソン―その生涯と治療技法

ミルトン・エリクソン―その生涯と治療技法

  • 作者: ジェフリー・K.ザイグ,W.マイケルムニオン,中野善行,虫明修
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2003/07/15
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 23回
  • この商品を含むブログ (4件) を見る


ぶっとびます。そして思った「この人は本物の変態だ」と。笑

ミルトン・エリクソンNLPの源流となった人物であり、家族療法にも彼の技法は取り入れられている。臨床技法において、多大な影響を与えた男である。

本書は、偉大な心理療法家ミルトン・エリクソンの生涯と治療技法を理解するための最適な入門書である。既成概念に囚われず、役立つ有効なものは何でも使うというユニークなミルトン・エリクソンのアプローチが心理療法の世界に与えた影響は計り知れない。すぐれて実践の人であった彼は、クライエントの本質をはっきり見るためにあえて理論を遠ざけ、介入法をそれぞれのクライエントのニーズに合わせて適用した。また彼は、メタファー、積極的介入、催眠誘導、逸話(アネクドート)等、革新的な技法をもちいた、劇的なコミュニケーションの達人であった。本書にはその技術的エッセンスが多くのエピソードとともにわかりやすく解説され、さらに、ヘイリー、ウィークランド、ベイトソンとの実際の対話におけるやりとりも数多く収録されている。


心理療法家ミルトン・エリクソンの生涯と治療技法を理解するための入門書。催眠、メタファー、逸話、含意、逆説介入等による面接の技術的エッセンスをエピソードとともに解説。エリクソンへの批判と反論や影響についても言及。

はい、アマゾンの説明文を引用しましたよぉ笑。 だって楽なんだもの。笑
まぁこの説明に尽きますよ。


詳しい技法はこの本を読んでもさっぱりわかりませんが、臨床におけるケーススタディがそのまま紹介されているのが有難い。読んでいるだけで面白い。脱帽。


幼少期

エリクソンは幼少期、いわゆる赤緑色盲で、音の高低が分からず、基本的なリズムを聴き分けたり、作ったりができなかった。また少なくともある程度、失読症であったという。

 エリクソンは「3」と「m」の違いをやっと理解できた6歳の時の体験をこう説明している。先生が彼の手を取って3とmを書いた。違いはすぐにはわからなかったが、少しして突然にまばゆい閃光が起こったと彼は述べている。その光の真ん中で、「m」はその足で立っていて、「3」は足の出ている横側で立っていた。

また、govermentを「gov-er-ment」と発音するのではないと理解した時も同様の体験をしている。

先生はエリクソンの同級生の名前「LaVerne」をその単語の中に入れて黒板に「govLaVerment」と書いた。その発音ができるようになると、彼女は「La」を省いて発音するようにと言った。彼がその通りに言ったとき、彼はふたたびまばゆい閃光を体験しその単語以外のものは見えなくなった。彼は「固く硬直したパターンの中に予想できない無関係なものを導入することでそのパターンを壊す」という彼の手法は、その方法は、その先生のおかげだと言っていた。

また19歳くらいの時にポリオ(小児麻痺)にかかり、全身麻痺となりほぼ回復するのに1年を要した。聴力、視力、そして眼球運動だけが残った。

この時、彼は便器兼用のロッキングチェアーにたまたま置き去りにされたことがあった。彼が退屈して、椅子が農場の見える窓際にあったらいいなぁと願っていると、椅子がほんのわずかに揺れはじめた。エリクソンはすぐにすぐに気づき、願望が何らかのかたちで微細な筋肉インパルスへと翻訳されたのだ、と結論付けた。


彼はここから、麻痺した身体が結局のところ動きを生み出すことができると分かり、自力で訓練して、難しいと言われたポリオを治してしまったのだ。


卓越した観察力

エリクソンの卓越した能力は、何と言っても【観察力】である。
ポリオによって彼は、ベッドに横たわりながら、納屋の戸が閉まり、足音が近づき誰かが家の中に部屋に入るのを聞いて、誰が近づいているのか、そしてその人がどんな気分なのか正確に判断できるようになったという。

また、視覚、聴覚しかなかったときに、暇つぶしに人を観察していたところ、見ただけでその人の脈拍数が把握できたともいう。


…まさに変態もとい、天才だ。




臨床において

臨床における彼の技法は本当に、天才的としか言いようがない。催眠もそうなのだが、一読したところ、エリクソンは必ずしも治療に催眠を用いたわけではなかったようだ。もちろん、催眠もすさまじい。


飛行機恐怖症の女性の治療では、まずトランス状態にしてから、その女性の恐怖などの感情を隣の椅子に移す。トランスから目覚めると「そこにいる!そこにいる!」と女性は騒いだ。女性は無事飛行機で旅行に行けるようになり、エリクソンはその椅子の写真をメッセージとともに撮って送った。メッセージには、「あなたの恐怖の永遠の休息の場所」と書いてあったという。。。


催眠ってのはなんでもアリだなぁ…と。笑





打ち疲れたので詳細には書けないが、エリクソンの治療技法は当時隆盛の緒につきはじめたロジャーズ流カウンセリングなどとまったく袂を分かつものであった。というより、エリクソン自身が、特定の論理に患者を押しこむことを嫌ったため、形式的な技法として自身の治療技法を残すことをしなかった。


したがって後世の我々がそれを正当に学ぶことはなかなか難しそうに思える。だからNLPのリチャードバンドラーは彼の非言語的技法はマネできたが、彼の豊かなメタファーや言語的手法はマネできなかったため、現在はシャーマニズムをやっているという。なんだかなぁ、である。


催眠と言えば五円玉揺らして「あなたはだんだん眠くな〜る」なんてのが真っ先に思い浮かんだり、TVショウなんかでやってるようないかがわしい催眠が頭に真っ先に浮かぶが、あれは古典的な催眠手法である。凝視法とか、暗示とかね。


エリクソンは、それらを使わない新しい催眠技法を編み出したことでも偉大である。握手一発で相手をトランスに入れたり、アンカリングによって瞬時にトランス状態や特定の情動を引き出したりと、これらは現代的な催眠手法である。


トランスとは人間が本能的に持っている現象なのだ。