『グレゴリー・チャイティン / セクシーな数学』

セクシーな数学―ゲーデルから芸術・科学まで

セクシーな数学―ゲーデルから芸術・科学まで

猥褻な本のレビューではないぞよ。
グレゴリー・チャイティン。聞いてもはたとわかる人はあまりいないかもしれない。すごい人なのだ。科学をやっている人間で、知らない人はいないのかもしれない。
この人は【アルゴリズム情報理論】によってゲーデル不完全性定理、またはチューリングの停止問題という公理系における『計算限界性』を数学的に定義した学者。いわゆるゲーデル文、という公理系の無矛盾性を証明できない言明をLISP(リスプ)というメタ数学的プログラミング言語によって、表現した。ゲーデル文はLISPでは【ランダム数・Ω(オメガ)】として表現された。「ランダム数」。Ωは彼の名を冠して敬意とともに「チャイティン数」とも呼ばれる。



この業績の特筆すべき点は、数理論理学における「完全な公理系においては、その無矛盾性を証明することができない言明が存在する。よって完全な公理系は不完全である」というゲーデル定理の適用範囲が、数学を扱うすべての情報空間に拡張されうる、ということを証明した点にある。


これにより、数学、物理、経済…ありとあらゆる数学を用いる論理体系が、あらかじめ不完全性を内包している、ということになり証明不可能な現象――チャイティンの証明ではランダム数となる――がどんな論理にも存在することが証明された。


これはそのまま即、【計算量の複雑性】(少し前に流行ったらしいアレ。バタフライ現象とかの)というパラダイムにつながっていくのだが、力量足らずして自分にはどう説明すればいいやらわからない…。
まぁ要するにだ、熱力学のマクスウェルの魔物・量子力学のハイゼンベルグの不確実性原理…これらが最終的に統計学的な解釈にならざるを得ないのは、情報理論からしても当然の帰結であり、つまりは「すべての情報量を的確に、法則的に、把握することはできない=統計=計算の限界性=複雑系」まぁこういうことになる。ごめん…、わからんですよね。笑 べ、勉強してくれ!!



本書はインタビュー集である。10章弱の内容からなり、中には『ユーザーイリュージョン』の著者、トール・ノートランダーシュ(だっけ?)もインタビュアーとしている。全体を通して言われていることは、ヒルベルトゲーデルチューリング〜数学的歴史の流れや、数学のひらめきと芸術との関係などであるが、要は
「情報、複雑系、ランダム性。この3つが今後三千年紀の大きなトピックとなる」
ということだ。



ところで、チャイティンの言葉はとても読みやすいと思った。訳もすごくいい。それもあるのだが、やはり頭のいい人間の言葉は、本質をつかんでいるからこそ簡潔にして明快な表現になるんだね。すごく読みやすかった。210ページくらいだけど3時間くらいで読めたよ。

BIG UP!!チャイティン!!