フィボナッチ数と黄金比

自然がもっとも好む美しい数列

ローマの数学がイスラムに移動し、再びヨーロッパに戻ってくるまでの約1000年間、ヨーロッパの数学は発達しなかったどころか忘れ去られていた。しかし、そんな1000年間でも、優れた数学者がわずかに出ている。


1170年ごろ、イタリアのピサに生まれたフィボナッチはそんな数少ない一人である。彼はエジプトやシリアを旅行し学んだアラビア数学を「算盤の書」としてヨーロッパに紹介。そのなかに、フィボナッチ数列と言う実に面白い数列が含まれていた。それは次のようなものである。


1,1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144…


これらは、第1項目と第2項目が1、第3項目からは前の2項を足した数になる数列。


この数列は自然界を観察すると多く存在する。
野山に咲く花の花弁は3、5、8といったものが多い。さらにマリーゴールドの花びらは13、アスターは21、ヒナギクは34、55、89という具合である。さらに植物の葉の数などもフィボナッチ数のものが多い。より多くの太陽光を受けるには葉は重ならないほうがよく、約数の少ないフィボナッチ数の組み合わせが好ましいのである。また、ヒマワリの種子の渦巻きにもフィボナッチ数が多い。
花や木や枝の分かれ方などを美しいと感じる、その奥にも数の数列が隠されている。

フィボナッチ数に秘められた黄金比

隣り合うフィボナッチ数の比を順に求めてみる。


1/1=1
2/1=2
3/2=1.5
5/3=1.666666…
13/8=1.625

144/89=1.6179775…
233/144=1.6180555…
と徐々に1.6180…へと近づいていくのがわかる。これを無限に繰り返すと、どんな数になるのだろう?正確に計算して見ると、


1+√5 / 2 となる。


これは、黄金比φ(ファイ)なのである。黄金比とフィボナッチ数、美しさの裏に潜む2つの数学的要素は、実はつながっていた。



さらに、フィボナッチ数はパスカルの三角形とも密接な関係にある。つまり、パスカルの三角形の対角線を合算するとフィボナッチ数になる。


また、パスカルの三角形の構造にはよくみると素数の数列がみつかる。


パスカルの三角形、黄金比、フィボナッチ数、そして素数。どれもが奥深いところで絡み合っている。これが数論の醍醐味なのだ。